TECについて〜仮歯のその先にある大切な役割〜

TECについて〜仮歯のその先にある大切な役割〜

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こんにちは!

神戸市灘区にあります、その歯科クリニックです!

今回はTECについて説明します。

歯科治療において、「TEC」と呼ばれる仮歯は単なる一時的な詰め物ではありません。見た目や噛み心地の確保だけでなく、歯肉や噛み合わせの状態を安定させ、本歯(最終補綴物)を成功に導く重要なステップです。今回は、TECの本当の役割と、知られざる重要性について詳しく解説します。


目次

  1. TECとは?その目的と定義
  2. TECが果たす4つの役割
  3. TECの材質と作り方
  4. TEC使用中の注意点とトラブル対策
  5. TECは本歯の完成度を左右する

1. TECとは?その目的と定義

TEC(Temporary crown/テンポラリークラウン)とは、最終的なクラウン(被せ物)が完成するまでの間、歯に装着される仮のクラウンのことを指します。保険診療や自費診療を問わず、歯の形成(削る)処置のあとに必ずといってよいほど使用されます。

患者さんにとっては「とりあえずの歯」という印象かもしれませんが、歯科医師から見れば、TECは“治療の精度を高めるための重要な装置”です。


2. TECが果たす4つの役割

① 審美性の確保

特に前歯など目立つ場所の治療では、見た目を保つためにTECは欠かせません。歯の色や形を周囲と調和させることで、治療期間中のストレスを最小限にします。

② 咀嚼機能の維持

奥歯の治療であっても、噛み合わせを保つことは重要です。TECがあることで、対合歯(上下の噛み合う歯)との接触が保たれ、食事や発音がスムーズになります。

③ 歯肉や歯の位置の維持

形成後の歯はむき出しになっており、放置すれば歯肉が入り込んだり、歯が動いてしまったりします。TECが覆うことで、歯肉の輪郭(マージン)を整え、最終補綴物のフィットを高めます。

④ 噛み合わせの確認・調整

TECを一定期間使うことで、最終補綴物に先立って噛み合わせの問題をチェックできます。違和感がある場合は仮歯で調整を行い、本歯製作に活かすことができます。


3. TECの材質と作り方

TECは基本的にレジン(プラスチック)で作られ、チェアサイド(診療台の上)で短時間に製作されます。手法には以下の2つがあります。

① 直接法(ダイレクト法)

患者さんの口腔内で、形成後の歯に直接レジンを盛って作る方法。簡便でスピーディー。

② 間接法(インダイレクト法)

事前に取った歯型から模型を作り、その上でTECを作成する方法。精度が高く、特に複数歯のブリッジなどで活躍します。

最近では3DプリンターやCAD/CAMによるTEC製作も進化しており、精密な仮歯がより短時間で提供できるようになっています。


4. TEC使用中の注意点とトラブル対策

TECは仮のものなので、永久的な耐久性はありません。以下の点に注意が必要です。

✅ 硬いもの・粘着質のある食品は避ける

TECは破折や脱離のリスクがあります。ガムやキャラメル、硬いせんべいなどは避けましょう。

✅ フロスの使い方に注意

フロスを上から通すのはOKですが、引き抜く際は横からスライドさせるのが基本。上下に引き抜くとTECが外れることがあります。

✅ 違和感や痛みを放置しない

仮歯が合っていない、もしくは接着剤が緩んでいる場合はすぐ歯科医院に相談を。放置すると虫歯や歯肉炎のリスクがあります。


5. TECは本歯の完成度を左右する

TECを「ただの仮歯」と思って軽視すると、最終的な補綴物の質に大きく影響します。逆に、TECを丁寧に仕上げ、適切に使うことで、最終クラウンやブリッジのフィット感・審美性・機能性が飛躍的に向上します。

実は、TECの精度を見れば、その歯科医院の補綴へのこだわりがわかるとも言えるのです。


まとめ

TECは見た目を保つ仮歯というだけでなく、最終補綴物の「設計図」ともいえる存在です。咀嚼や審美の維持に加え、噛み合わせ調整、歯肉形成、さらには患者さんの生活の質(QOL)にも深く関わっています。

TECを丁寧に扱うことが、成功する補綴治療の第一歩。治療中の一時的な処置にも、ぜひ関心をもっていただきたいと思います。

歯科医院でTECについて質問されることがあれば、遠慮せずに聞いてみてください。「仮歯」が実は「未来の本歯を育てる土台」であることに、きっと納得いただけるはずです。

その歯科クリニック 歯科衛生士 井上

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